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映画「みんなの学校」

「みんなの学校」という映画を見ました。大阪のある小学校が、特別支援学級で
なく普通学級に障害児や問題児を受け入れて、みんなを伸ばしていくというドキ
ュメンタリーです。

いい映画でした。
演技無しの、実際の先生や生徒の気持ちがたくさん出てきます。撮影されるほう
が、カメラを意識していないです。よくまあ、これだけ踏み込んだところまで取
れたものです。監督とカメラマンはすごいと思いました。

映画としては素晴らしい。
では、教育として素晴らしいかというと、これは一つのやり方にすぎないし、問
題も多いと思います。

公立学校という制約の中では、よくやっていると思います。そこは、率直に敬意
を表さないといけないと思います。とにかく、大人たちがウソのない世界を作っ
ています。公務員世界でこれができたのは、すごいです。
問題点はいくつかあるのですが、まず、問題行動のあった子どもに対して、お説
教が多すぎます。女性の校長さんが、その役です。それで、結果はうまくいって
います。

この校長さんはすごく叱り上手、お説教上手なんです。ちゃんと計算されている。
一発かましてから、「それは、こういうことなんでな、あんたにもわかってもら
わんと....」と温かく接していく。そうすると子どもに人間味が伝わってい
く。「この人、ほんとうに思ってくれてる」という気持ちになる。それでうまく
いきます。

叱り下手な先生も登場しました。ある男の先生が、ある子をとことん叱っていま
した。こちらは、言うほどにエキサイトしていく叱り方。
そうしたら、校長がその先生を厳しく叱った。「あんた、あれで子どもが窓から
飛び降りたら、どうすんねん」 それが言える校長がいるんだ、たいしたものだ、
と思いました。

でも、校長も、叱りつけとお説教なんです。上手ではある。締めどころと緩めど
ころを心得てる。
でも、とことんやって、反省文を書かせたり、相手に謝らせたり、「もうしない
と決意しました」と言わせたりします。

そんなに追い詰めたら、本人の判断ではなくなってしまいます。本人は、頭が真
っ白になってる。校長室や職員室によびつければ、説得できるに決まっています。

「そう本人が言ったって、またやるわ」くらいのことは心得ている校長なので、
うまくやれています。でも、これは、名人芸でうまくやれているだけだと思いま
す。教育の本道ではない。

まずいことをしている子には、それが迷惑だとか危険だとかいうことを、とにか
く伝えることです。たいていは、本人がそれに気がついていないからやっている
のです。伝えてから、そこから先、どう対応するかは本人に考えてもらう。うま
く対応してくれたら、「ありがとう」です。本人に立場や異論があるなら、話し
合う。

状況によっては、母オオカミが「ガルルル」と低くうなって子どもを黙らせるの
と同じようなこともあるでしょう。でも、それは「ごめんなさい」を言わせるの
とは違います。

「ごめんなさい」を言わせるのではなくて「察してもらってありがとう」なんで
す。
「考えさせる」、「自主性尊重」というのは、そういう現実問題が起こったとこ
ろでやらないとだめです。国語や算数などの中でだけやっていても効果が薄い。
謝らせる、反省させる、決意させる。
これらは、みんな、浅薄です。心と頭が別々に動くようになります。
後年、「反省するんだけど、どうしてもまたやってしまう。」
ことが多くなります。

これは、個別の先生がというより、学校文化としての道徳がこのレベルに留まっ
ています。それが、社会全体に及ぼしている影響は大きいと思います。
こどもが「ごめんなさい」を言うまで、ぎゅーぎゅー問い詰めるというのが、い
たるところにあります。

表面的でいいから「ごめんなさい」を言わせて、それでケリをつけよう、という
のは大人同士の世界の智恵です。智恵とも言えるし、政治とも言えます。
子どもにはよくないです。心が育たなくなります。

古山明男

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古山明夫

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