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幸福感、充実感

古山です。

子どもはすごいエネルギーを持っています。
次から次へと興味関心を持って、休むことなく何かしています。

どうして?
子どもは、「いま、ここ」に生きているから。

昔からの賢い人たちが、幸せになりたいなら「いま、ここ」に生きなさい、と言います。
なるほど。それはわかる。
恐怖や心配は、過去の蒸し返しと、未来への不安で生まれているわけだから。

でも、ねえ。
大人になってしまうと難しいのですよ。
「いま、ここ」に生きるってことは。
恐怖や心配を止めるなんて、できるはずがないじゃないですか。
なんとかしようとする考えそのものが、恐怖と心配でできているのですから。
考えによるコントロールセンターができてしまっていて、
「リラックスしなければ」「楽しまなければ」と、なにもかにも「ねばならない」にしてしまいます。

とかなんとかいいつつ、いろいろな健康法をやったり、瞑想をやったり、
子どもを観察したりはしていて、
人間の「考え以外で生きている部分」がどんなものなのか、おぼろげには掴んできていました。

そこにちょうど、昨年秋から体調を崩しました。
「イテテテ」と呻いているだけ。
考えも、人生もあるものか。「イテテテ」という現在を生きているだけ。

それから、シュタイナーの12感覚論に触れました。
五感というけれど、シュタイナーは12の感覚があるという。
ほんとですか? と、12あるというのを、一つ一つ確かめていました。
それをやっていると、なんだか充実した感じがあります。
感覚というのは、どれも現れては消えます。保存不可能。
現在の中にしかない。
たとえば、歯が痛いときの痛みを再現できますか。
痛かったことは覚えているけれど、ひどい痛みそのものは思い出せません。
おなじように、ユリの香りそのものを、記憶で感じ取れますか?
恋人との触れ合いを記憶で再現できますか。
できるくらいなら、再び会う必要などないわけです。

そうやって、いろいろな感覚を確かめていると、不思議と充実感があります。
感覚をとらえていると、自然に「いま、ここ」にいます。

「いま、ここ」に生きようと頭で決意したところで、
けっきょくそれも「いま、ここに生きる」という考えをリピートするだけに終わります。
ところが、それは感覚を大事にすることなのだ、と捉えれば、実行するのはたやすいです。
手のにおいをかいだり、かゆいところを掻いたりすることなのですから。

たぶん、自傷行為をする人たちは、
肉体的な苦痛によって生きている感覚を取り戻したいのだろうと思います。

子どもたちは「いま、ここ」に生きています。
子どもたちの学びというのは、感覚の世界に住み、感覚を磨くことなのです。
そうすると、いくらでも次のエネルギーが湧いてきます。
自転車に乗れるようになろうと、何日も何日も乗り続ける。
聞き覚えた言葉を、口の中でぶつぶつ言い、さっそく人に向かって言ってみる。
自動車の車種を一目で言い当てる。
これは、なんの香りであるかを言い当てる。

結果を達成したかどうかではなくて、感覚をどれだけ磨き、
使いこなすことができたかの満足感なのです。
満足感といっても、それは自己閉鎖的なものではありません。
世界を感じることができること、他人を感じることができること、
それによって自分を超えた世界の中に溶けていってしまうのです。

いまの教育論でもっとも欠けているのは、感覚の尊重なのだと思います。
それで、生きている実感のない人間がたくさん生まれてしまう。

さらに、いまの教育論が大事にしていないものに、「感情」と呼ばれる、
とてつもない身体内イベントがあります。
感情は感情であって、言葉で置き換えてはいけない。感じ取ればいい。
そうすると、感情はとてつもなく深いことを、身体にしてくれます。
自分の感覚と感情を、あるがままに知っていること。
それが自己知です。

さらに、「思考」という不思議なものがあります。
人類はまだ「思考」を使いこなせていません。刃物や火を手にした子どものようなものです。
あぶなくてしょうがない。
だからといって、「思考」を放り棄てるわけにはいきません。
思考を使いこなすのは、便利だし、楽しいし、
使いこなせるかどうかに人類の命運すらかかっています。

これらすべてに、出会い続けること。
それには、大人も子供もありません。

「いま、ここ」で、新しいものに出会い続けること。
それを「学び」と呼ぶこともできます。
他人のためにそのチャンスを作ろうとするなら「教育」と呼ぶこともできます。
自分でそれを生き抜こうとするならば、「覚醒」と呼ぶこともできます。

その「学び」であり「覚醒」であるものに出会っているならば、
努力の必要などなくなります。
エネルギーを得ることが、また次のエネルギーにつながっていくからです。

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古山明夫

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