「子どもの社会性を育てるには、学校の集団生活が必要である」ということが広
く信じられています。しかし、これは、事実と違います。
子どもの社会性は、信頼できる人との関係から発達していきます。
信頼できる人間関係を持っている子どもは、家庭以外の場に行って、自分がした
いことがあると、親の顔を一瞬チラッと見るものです。この場で自分のすること
が許されているかどうか、判断しているのです。
この判断をしている子は、そう滅茶苦茶なことはしないものです。また、まずい
ことをしたときも、親から穏やかに「それはまずい」と伝えれば、それで理解し
ます。
子どもは、外界に対して無力です。信頼できる人を求め、その人の判断に従うも
のです。それは、本能的にやります。そうやって安全を確保した上で、自分が取
り組む世界を作っていきます。
俗に言う「しつけがなってない」子どもは、しつけていないことが原因ではなく、
信頼できる人、ということなのです。だから、ただ集団生活を送らせれば社会性
が身につくというものではありません。
信頼できる人を持てなかった場合に、大きくわけて2種類あります。
一つは、指示、アドバイスが多すぎた場合です。子どもは自分の判断を持てず、
大人のいうことを意図的に無視したり、逆のことをしたりします。
もう一つは、放任され忘れられた子どもになってしまうことです。子どもは判断
基準を持てず、いろんな衝動に従うだけになります。
しつけに関しても、子どもが信頼と模倣によって獲得するのが自然なものです。
賞罰によるしつけは、不自然で、子どもの内発的なものを歪めます。
信頼できる人がいる、ということが重要なことでして、学校に行ったから行かな
かったからということではありません。ホームスクールだから社会性が育たない、
ということはありません。
古山明男