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子どもに内蔵された自己教育システム

古山です。

人間は生後1年くらいで歩くようになります。そのときに、ハイハイから始まっ
て、立ち上がり、歩くまで、とてつもない時間と労力をかけています。
それと同じような発達システムが、その後もずっとあります。

長年子どもとつきあってきて、子どもの遊びの研究をしていました。その結論と
して、こんなことを考えています。

人間にとって遺伝として組み込まれている発達システムは、子どもの遊びとして
現れてくる。それは、数百万年にわたる人類の歴史に基づいている。

それに対して、産業社会に義務教育として現れた教育は、せいぜい最近の
200~300年の社会のことしか考えていない。そんな短い期間に遺伝的に対
応できるはずがなくて、子どもたちに無理な負担をかけている。それで、国家主
導型教育はつまらないし、狭い目的にしか役立たないのだ。

長野の信濃毎日新聞に毎月コラムを書かせてもらっています。今回は遊びの意味
について書きました。

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最近、勉強をしなくても成績のいい子どもたちと付き合う機会がよくあります。
彼らに共通しているのは、自分で遊びを創り出すのがうまいことです。「この性
質は面白いぞ」「これを使って、こんなことができないか」で、すぐに遊び出す
のです。

ある中学生と円盤状の磁石を使って実験をしているうちに、その子が「これで
おはじきしてみよう」と言い出しました。「いいね」とつきあったら、これがな
かなか面白いのです。磁石同士の反発力を利用するのは、直接ぶつけるのと感覚
が違います。その子とは、「つまようじでやったらどうだ?」、「鉛筆は?」と
やってみて、その度におもしろいことが起こりました。

その子の同級生で、やはり勉強もしないのに成績がいい子は、母親がボード
ゲーム好きで、子どもたちといっしょに毎晩のようにボードゲーム大会をやって
います。

ある大学生と、遊び道具作りの研究をしています。この人は、よくまあこんな
ことを考えつくものだということをちゃかちゃかと作ります。その人は、高校時
代はロボットコンテストで世界大会まで行っているし、いまは、なにやら高等数
学を使いこなして、人工知能を自分で作っています。それらがぜんぶ、遊び感覚
です。

モノをいじり回し、その性質を知って使いこなすというのは、最高の遊びなの
です。それは遊びであり、なおかつ研究や実業の第一線で活躍できる力です。

遊び創りがうまい連中がどういう教育を受けているかと尋ねると、やはり母親
が遊びの大切さを理解していました。幼児教育の段階だけでなく、小学校以降も
遊びをよく支援してもらっています。それと、学校歴のどこかで、面白がること
の真髄を伝えることのできる教師に出会っています。

いいですねえ。私は、結局のところ「今は勉強しなさい」と言う教師にしか出
会えなかった。

遊びというのは、遺伝に組み込まれた人間の自己教育システムだと思われます。
人類が狩猟採集の時代に知恵と工夫で身につけたものが、子どもの遊びとなって
現れてくるのです。そういう研究が最近現れてきていて、なるほどと頷かされま
す。教育は、子どもの遊びとうまく調和できないとうまくいくはずがないのに、
と思います。

(信濃毎日新聞 2018年5月23日朝刊「コンパス」欄)

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古山明男

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