古山です。
子どもに、生きていくのに最も役に立つことを手渡したいと、私たちは願ってい
ます。この子たちに、ほんとうに幸せになってほしいのです。
では、何を手渡しましょうか。
財産を渡しても、賢く使えるかどうかはわかりません。
学歴や資格も、葛藤の多い人生になることから防いではくれない。
生きていくのにもっとも大事なことは、恐怖にどう対処していくかのアートを伝
えることだと思います。
アートというのは芸術という意味もありますし、技法・技術という意味もありま
す。
私自身、したくもないことをいろいろ仕出かしました。それは、たいていは怖さ
紛れです。
自分が誰の言うことにも耳を傾けなくなるのは、怖いからです。
見栄を張るのは、怖いからです。
相手を攻撃するのは、怖いからです。
自分に自惚れるのは、怖いからです。
何かに耽溺するのは、怖いからです。
教条にしがみつくのは、怖いからです。
どうしてそんなに怖いの?
怖かったときに、「ああ、怖かったねえ」と言って背中を撫でてくれる人がいな
かったから。
自分で自分を「ああ、怖かったねえ」とハグできないから。
それで、いろんなカスを掴んでしまった。
耳を澄ませれば、この世界はたくさんのことを語りかけているのに。
親たちも先生たちも、「~すればいいのに」と「もっと気をつけなさい」しか持
っていなかった。それは、大人たちが自分の恐怖に直面しないで済む手段だった。
怖さを認識できるところから、明晰さが生まれます。
怖いまんまでいい。
自分の中の子供が怖がっていることを慈しめるのが、大人というものです。
恐怖をどう生きていくかのアートがあれば、いろんな能力は、おまけのようにつ
いてきます。恐怖がなくなれば、意欲は自然に出てきます。
現代の主流の教育観、つまり、人材を育てることと稼げるようになることは、大
事なポイントをはずしたままだと思うのです。
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古山明男
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